居酒屋の定番メニューや家庭の食卓でおなじみのホッケ。
大きくて脂が乗った美味しい身が、手頃な価格で楽しめる魚というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
しかし最近、スーパーなどで「あれ、ホッケって意外と高いな」と感じたことはありませんか。
かつて「安くて美味しい魚」の代表格だったホッケは、今やその立ち位置を変えつつあります。
この記事では、ホッケが安かった本当の理由から、現在の価格が高騰している背景、種類ごとの値段の違い、さらには美味しいホッケの見分け方や食べ方まで徹底的に解説します。
【結論】ホッケが安いのは昔の話?価格高騰の理由と現在の立ち位置

かつてホッケが安かった2つの理由:「大量の輸入」と「豊富な漁獲量」
かつてホッケが安価だった最大の理由は、安価な輸入品が市場に大量に流通し、同時に国内でも豊富な漁獲量が維持されていたためです。
特に、食卓でよく見かけるホッケの多くは、ロシアなどから輸入される「シマホッケ」でした。
シマホッケは大量に漁獲できるため供給が安定しており、手頃な価格を実現していました。
これに加えて、国内で獲れる「真ホッケ(マホッケ)」も安定して水揚げされていたため、ホッケは常に安価で手に入る魚だったのです。
なぜ高くなった?現在のホッケが「高級魚」と言われる本当の理由
現在ホッケの価格が高騰し「高級魚」とまで言われるようになったのは、国内の漁獲量が激減し、最大の輸入元であったロシアからの供給が不安定になったことが主な原因です。
地球温暖化に伴う海水温の上昇などの影響で、国内のホッケの生息数が減少し、漁獲量はピーク時の1割以下にまで落ち込んでいます。
さらに、国際情勢の変化により、これまで安価なホッケの供給を支えてきたロシアからの輸入も大幅に減少しました。
需要に対して供給が全く追いつかない状況が、現在の価格高騰を招いているのです。
【価格推移】国産・輸入品それぞれの近年の価格変動まとめ
近年の価格推移を見ると、国産・輸入品を問わず、ホッケの価格は著しく上昇しています。
特にここ10年ほどで価格は右肩上がりに推移しており、一昔前の2倍近い値段で販売されることも珍しくありません。
かつては庶民の味方であったホッケですが、データを見ても「いつでも安く買える魚」とは言えない状況に変化していることが分かります。
種類が値段を決める!安いホッケと高いホッケの決定的な違いとは?

「シマホッケ」と「真ホッケ(マホッケ)」の値段と味の違いを比較
市場に流通するホッケには、主に「シマホッケ」と「真ホッケ(マホッケ)」の2種類があり、一般的に安価なのがシマホッケ、高価なのが真ホッケです。
それぞれの特徴は「脂のシマホッケ、味の真ホッケ」と表現されることが多く、味や食感に明確な違いがあります。
種類 | 主な産地 | 価格帯 | 味・特徴 |
シマホッケ | ロシア、アラスカなど(輸入品) | 安価 | 脂乗りが非常に良く、ジューシーで身が柔らかい。 |
真ホッケ | 北海道など(国産) | 高価 | 脂はシマホッケほどではないが、身が締まり、旨味が強く上品な味わい。 |
シマホッケはその脂の多さから干物に適しており、居酒屋などで提供されるのはこちらが多い傾向にあります。
一方、真ホッケはホッケ本来の深い味わいが楽しめ、地元北海道などでは鮮魚としても人気があります。
見分け方は?頭の有無と「腹開き」「背開き」で判別できる
シマホッケと真ホッケは、加工方法によって簡単に見分けることができます。
スーパーなどで売られている場合、頭が落とされて腹側から開かれているのが「シマホッケ」、頭が付いたまま背中側から開かれているのが「真ホッケ」であることがほとんどです。
これは、輸入品であるシマホッケが加工の効率上、頭を落として腹開きにされることが多いのに対し、国内で加工される真ホッケは伝統的な背開きが主流であるためです。
また、名前の通り、シマホッケの皮にははっきりとした縞模様があるため、皮目を見ることでも判別可能です。
幻の高級魚「根ボッケ(ねぼっけ)」とは?なぜそんなに高いのか
「根ボッケ」とは、回遊せずに餌が豊富な岩礁地帯に定着(根付く)し、特別大きく成長して脂が乗った真ホッケのことを指します。
群れで回遊する一般的なホッケとは異なり、豊富な餌を独占して育つため、そのサイズと脂の乗りは格別です。
漁獲量が極めて少なく、そのほとんどが産地周辺の高級料亭などで消費されるため、市場には滅多に出回らない「幻の魚」とされています。
希少価値が非常に高く、その別格の味わいから、一般的なホッケとは一線を画す高級魚として扱われています。
北海道の三大ブランド「羅臼・礼文・日高」のホッケはなぜ高い?
同じ北海道産の真ホッケの中でも、「羅臼(らうす)」「礼文(れぶん)」「日高(ひだか)」で水揚げされるものは「三大ブランドホッケ」と呼ばれ、特に高品質で高値で取引されます。
これらの地域は、潮の流れが速く、餌となるプランクトンが豊富なため、身が引き締まり、上質な脂を蓄えた極上のホッケが育つ漁場として知られています。
それぞれの産地で旬の時期に獲れたホッケは、味、脂の乗り、身の厚みのすべてにおいて最高品質と評価され、他のホッケとは区別されるブランド魚として扱われるのです。
スーパーでの値段はいくら?ホッケの価格相場を徹底調査
【一覧】スーパー・通販・居酒屋での値段の目安
ホッケの価格は、購入する場所や種類、サイズによって大きく異なります。
最も手頃に購入できるのはスーパーマーケットですが、近年はこちらでも価格が上昇傾向にあります。
購入場所 | 価格帯の目安(1枚/1品あたり) | 備考 |
スーパー | 200円~500円程度 | シマホッケは比較的安価。真ホッケや大きいサイズは高くなる。 |
インターネット通販 | 500円~1,500円程度 | 産地直送の高品質なブランドホッケが多く、価格帯は広い。 |
居酒屋 | 600円~1,200円程度 | シマホッケか真ホッケかで値段が変わることが多い。 |
美味しいホッケを見分けるポイントは「幅」と「厚み」
美味しいホッケを選ぶ際は、全長よりも体の「幅」と「厚み」に注目するのが最も重要なポイントです。
脂が乗ってよく太ったホッケは、背中の部分が盛り上がり、全体的に幅が広く、まるでハートのような形に見えます。
また、横から見て身がふっくらと厚いものを選びましょう。
その他、皮にツヤがあり、身が乾燥して茶色く変色していないか、小骨が毛羽立っていないかも新鮮さを見極めるチェックポイントです。
“訳あり”や”特売”の安いホッケは買っても大丈夫?
特売などで見かける極端に安いホッケは、旬ではない時期に獲れたものや、サイズが規格外である「訳あり品」の可能性があります。
品質自体に問題があるわけではないので食べることはできますが、脂の乗りが少なかったり、身がパサパサしていたりする場合があります。
美味しさを最優先するならば避けたほうが無難ですが、価格なりの味わいであることを理解した上で購入する分には問題ないでしょう。
ホッケはどこに売ってる?主な取扱店と購入できる場所
ホッケは、全国のスーパーマーケットの鮮魚・冷凍食品コーナーで最も一般的に購入できます。
その他、デパ地下の鮮魚店や、高品質な商品を扱うインターネット通販でも手に入れることが可能です。
ほとんどの場合、保存性を高めた冷凍の干物(開き)の状態で販売されています。
なぜホッケは「開き(干物)」で売られていることが多いのか?

一番の理由は「鮮度落ちが非常に早い」から
ホッケが市場でほとんど「開き(干物)」の状態で売られている最大の理由は、この魚が極めて傷みやすく、鮮度の低下が非常に早いためです。
水揚げされた直後から自己消化が急速に進むため、生のままでは産地から遠い消費地まで流通させることが物理的に困難でした。
そのため、水揚げ後すぐに開いて干物にし、長期保存を可能にする加工法が主流となった歴史があります。
干物にすることで旨味が増すというメリットも
ホッケを干物に加工するのは、保存性のためだけではありません。
干す工程で身から余分な水分が抜けることにより、ホッケが本来持つタンパク質などの旨味成分が凝縮されるという大きなメリットがあります。
また、ほどよく脂が残り、身が引き締まることで、生で焼いたときとは一味違う、濃厚で深い味わいが生まれるのです。
生のホッケはどこで食べられる?産地ならではの刺身や寿司
生のホッケを味わうことができるのは、北海道をはじめとする水揚げ産地周辺に限られます。
鮮度が命である生のホッケを使った刺身や寿司は、地元でしか食べることのできないまさに「幻の味」と言えるでしょう。
特に、新鮮な生ホッケの寿司は「バキバキ」という愛称で呼ばれることもあり、とろけるような脂の甘みと独特の食感は、干物とは全く異なる魅力を持っています。
焼いた身が赤い(ピンク)のはなぜ?食べても大丈夫?
ホッケを焼いた際に、身の一部がピンク色や赤っぽくなることがありますが、これは多くの場合、新鮮な証拠であり、品質に問題はありませんので安心して食べられます。
この色は、ホッケの筋肉に含まれるミオグロビンという色素タンパク質が、加熱によって変性することで現れる自然な現象です。
火が通っているにもかかわらずピンク色を保つことがありますが、生焼けとは異なります。
ただし、全体的に火の通りが甘い場合は、追加で加熱するようにしてください。
絶品!家庭でできるホッケの美味しい食べ方と調理法

フライパンで簡単!ふっくらジューシーに仕上げる上手な焼き方のコツ
ホッケの干物は、グリルがなくてもフライパンで簡単に美味しく焼くことができます。
ポイントは、クッキングシートを使い、蓋をして蒸し焼きにすることです。
まず、フライパンにクッキングシートを敷き、ホッケの身側を下にして中火で焼き色がつくまで焼きます。
次に、裏返して皮目を下にしたら、蓋をして弱火にし、じっくりと蒸し焼きにしてください。
最後に蓋を開けて水分を飛ばすことで、皮はパリッと、身はふっくらジューシーに仕上がります。
定番の塩焼き以外も!煮付け・フライ・竜田揚げのおすすめレシピ
ホッケは塩焼きが定番ですが、そのクセのない白身は様々な料理に応用できます。
産地で手に入る生のホッケは、甘辛い煮付けにすると絶品です。
干物を使う場合でも、骨を取り除いて一口大にカットすれば、フライや生姜を効かせた竜田揚げ、野菜と一緒に炒めるちゃんちゃん焼きなど、幅広いアレンジレシピで楽しむことができます。
一番美味しい旬の時期はいつ?北海道の産地ごとに解説
ホッケの旬は、産卵のために栄養を蓄える時期と、産卵後に体力を回復するために餌をたくさん食べる時期の、年に2回あるとされています。
一般的には5月~7月頃の初夏と、11月頃の秋から冬にかけてが美味しい時期です。
ただし、北海道内でも産地によって旬のピークは異なり、羅臼では9月~10月、礼文では7月~8月、日高では11月~12月がそれぞれ最高のシーズンとされています。
買ったホッケの正しい保存方法(冷蔵・冷凍)と賞味期限の目安
ホッケの干物を購入後、すぐに食べない場合は、冷凍保存するのが最も品質を保てます。
一枚ずつ丁寧にラップでぴったりと包み、さらに冷凍用の密閉袋に入れて空気を抜いてから冷凍庫へ入れてください。
冷蔵保存の場合は5日以内、冷凍保存の場合は最長でも2ヶ月以内を目安に消費するのがおすすめです。
冷凍したホッケを調理する際は、冷蔵庫でゆっくりと自然解凍させると、旨味の流出(ドリップ)を最小限に抑えられます。
まとめ:ホッケが安い理由と今後の価格動向を理解する
かつて安くて美味しい魚の代表だったホッケは、漁獲量の減少と輸入の不安定化により、その価格を大きく上げています。
もはや「安い魚」とは言えなくなりつつありますが、種類ごとの特徴や美味しい見分け方、調理法を知ることで、価格以上の満足感を得ることは可能です。
この記事で解説した情報を参考に、賢く美味しいホッケを選び、様々な料理でその魅力を再発見してみてはいかがでしょうか。
- ホッケが安かったのは、安価な輸入品と国内の豊富な漁獲量に支えられていた過去の話である
- 現在は国内漁獲量の激減と輸入の不安定化により、価格が高騰し高級魚化している
- 市場には安価な輸入「シマホッケ」と高価な国産「真ホッケ」が主に流通する
- シマホッケは脂が多くジューシー、真ホッケは旨味が強く上品な味わいが特徴である
- 頭がなく腹開きのものがシマホッケ、頭付きで背開きのものが真ホッケの場合が多い
- 回遊せずに大きく育った「根ボッケ」は、希少価値が高い幻の高級魚とされる
- 美味しいホッケは、全長よりも「幅が広く」「身が厚い」ものを選ぶのが正解である
- ホッケが干物で売られるのは、鮮度落ちが非常に早く、生のままでは流通が困難なためである
- フライパンで焼く際は、蓋をして蒸し焼きにするとふっくら仕上がる
- 焼いた身がピンク色なのは新鮮な証拠であり、品質に問題はない