スーパーの鮮魚コーナーで、マグロとカツオの価格を見比べて「なぜカツオはこんなに安いのだろう?」と疑問に感じたことはありませんか。
同じ赤身魚で、刺身やたたきとして人気があるにもかかわらず、その価格には大きな差があります。
この記事では、カツオが安い理由を漁獲量や規制、加工方法といった複数の視点から徹底的に解明します。
さらに、なぜカツオは「たたき」で食べられることが多いのか、スーパーで売られているカツオをより一層美味しく食べるための裏技、そして意外と知られていない豊富な栄養価についても詳しく解説していきます。
この記事を読めば、カツオの安さの秘密がわかり、次からカツオを選ぶのがもっと楽しくなるでしょう。
カツオがマグロより安いのはなぜ?4つのシンプルな理由

カツオがマグロと比較して安価で提供される背景には、大きく分けて4つの理由が存在します。
漁獲量の多さから加工方法の違いまで、様々な要因が価格に影響を与えています。
理由1:漁獲量が圧倒的に多く、安定して獲れるから
カツオが安い最も大きな理由は、マグロに比べて漁獲量が圧倒的に多いことです。
農林水産省の統計によると、令和3年の全国のかつお類の漁獲量は約25万トンであるのに対し、マグロ類の漁獲量は約15万トンと、カツオが大きく上回っています。
供給量が多いため市場価格が安定し、手頃な価格で消費者に届けることが可能になるのです。
理由2:漁獲に関する規制がマグロほど厳しくないから
マグロ類は資源保護の観点から、漁獲量やサイズ(例:30kg未満のクロマグロは漁獲禁止)に関して厳しい国際的な規制が設けられています。
一方、カツオの漁獲規制はマグロほど厳しくなく、漁獲日数や数量に関するものが中心です。
この規制の緩やかさが、安定した漁獲と供給につながり、結果として価格を抑える一因となっています。
理由3:人気と需要がマグロに集中しているから
寿司ネタの王様としても知られるマグロは、トロをはじめとする部位の人気が非常に高く、国内外で絶大な需要があります。
回転寿司などでもマグロを注文する人は多く見られますが、カツオを注文する人は比較的少ない傾向にあります。
この需要の差が市場価格に反映され、マグロの価格が高騰する一方で、カツオはより手頃な価格帯を維持しているのです。
理由4:「たたき」という加工法がコストダウンを実現しているから
カツオは「たたき」として販売されることが多く、この加工方法も安さの理由の一つです。
たたきの製造工程では、表面を炙る作業が自動化された機械によって行われるため、人件費を抑えることができます。
また、一度加熱することでマグロの刺身よりも日持ちが良くなり、食品ロスの削減にも繋がるため、コストを抑えて販売することが可能になります。
スーパーで刺身より「たたき」をよく見かけるのはなぜ?

スーパーの店頭では、カツオの生の刺身よりも「たたき」の方が多く並んでいます。
これには、カツオという魚の特性と、食文化に根差した合理的な理由があります。
理由1:炙ることで特有の生臭さを消し、食べやすくなるから
カツオには独特の鉄分のような風味や香りがあり、これが「クセが強い」と感じられることがあります。
表面を高温で炙ることによって、この特有の生臭さが軽減され、香ばしい風味が加わります。
ニンニクやネギなどの薬味と一緒に食べる文化も、カツオの風味を活かしつつ、より多くの人が美味しく食べられるようにするための先人の知恵と言えるでしょう。
理由2:寄生虫(アニサキス)のリスクを加熱で減らせるから
近年、魚介類に付着する寄生虫「アニサキス」による食中毒が問題視されています。
アニサキスは冷凍や加熱処理で死滅するため、表面を炙る「たたき」は、生の刺身に比べて食中毒のリスクを低減させる効果があります。
消費者の安全志向の高まりを受け、小売店が生のカツオよりも加工済みのたたきを優先して扱う傾向が強まっています。
理由3:表面を炙ることで日持ちが良くなり、流通させやすいから
表面を加熱することで雑菌の繁殖を抑え、鮮度の低下を遅らせることができます。
これは、冷蔵技術が未発達だった時代に、漁師が船上でカツオを美味しく食べるために生み出した調理法が起源とされています。
現代においても、たたきにすることで消費期限が長くなり、スーパーなどでの在庫管理がしやすくなるという流通上のメリットがあります。
理由4:生の刺身は鮮度が命!足が早いため店頭に並びにくい
カツオは非常に鮮度が落ちやすい魚、いわゆる「足が早い魚」として知られています。
そのため、生の刺身として最高の状態で提供できる期間は非常に短いです。
産地から離れた地域のスーパーでは、新鮮な生カツオを安定して仕入れることが難しく、結果として冷凍物や加工品のたたきが主流となっているのが現状です。
カツオは安いけどまずい?人気がないと言われる本当の理由
「カツオは安いけれど、あまり好きではない」という声も聞かれます。
その背景には、カツオが持つ独特の風味や鮮度の問題が関係しています。
カツオ独特の「血の味」やクセが好みを分ける
カツオの赤身には鉄分が多く含まれており、これが「血の味」や「鉄っぽい」と表現される独特の風味の元になっています。
この風味がカツオの魅力である一方、人によっては苦手だと感じる原因にもなります。
マグロのクリアな旨味とは異なる、野性味あふれる味わいが、好みを二分する要因と言えるでしょう。
鮮度が落ちやすく、家庭で扱うのが難しい魚だから
前述の通り、カツオは鮮度の劣化が非常に早い魚です。
鮮度が落ちると、特有の生臭さがさらに強くなってしまいます。
家庭で新鮮なカツオを見極め、適切なタイミングで調理するのは意外と難しく、一度でも鮮度の落ちたカツオを食べて苦手意識を持ってしまった人も少なくないかもしれません。
旬を外すと味が落ちやすい?「初ガツオ」と「戻りガツオ」の違いとは
カツオには年に2回の旬があります。
春から初夏にかけて北上する「初ガツオ(上りガツオ)」は、脂が少なくさっぱりとした味わいが特徴です。
一方、秋に南下してくる「戻りガツオ」は、たっぷりとエサを食べて脂がのり、濃厚でこってりとした味わいを楽しめます。
この旬の時期を外れたカツオは、味が落ちてしまう傾向があるため、食べるタイミングも美味しさに大きく影響します。
スーパーの安い「カツオのたたき」を劇的に美味しくする裏技

手頃な価格で手に入るスーパーのカツオのたたきですが、ほんの少し手間を加えるだけで、その味わいを格段に向上させることができます。
食べる直前にひと手間!「追い炙り」で香ばしさを最大限に引き出す方法
スーパーで売られているたたきは、加工から時間が経ち、表面の香ばしさが失われていることがあります。
食べる直前に、調理用バーナーや熱したフライパンで皮目を軽く炙り直す「追い炙り」を試してみてください。
パリッとした食感と、炙りたての香ばしい香りが蘇り、まるで専門店のような味わいになります。
加熱しすぎると身が硬くなるので、あくまで表面をサッと炙るのがコツです。
臭みを消して旨味をプラスする最強の薬味とは?
カツオのたたきには、薬味が欠かせません。
定番のニンニクや生姜、ネギ、大葉、ミョウガなどは、カツオの臭みを消し、爽やかな風味を加えてくれます。
特に、スライスした新玉ねぎをたっぷり添えると、辛みが少なくシャキシャキとした食感がアクセントになり、さっぱりと食べ進めることができます。
ポン酢だけじゃない!カツオのたたきに合うタレと簡単アレンジレシピ
定番のポン酢も美味しいですが、たまには違う食べ方を試してみてはいかがでしょうか。
シンプルに塩とごま油でいただく「塩たたき」は、カツオ本来の旨味を引き立てます。
また、オリーブオイルと塩、黒胡椒、レモン汁で和えれば、おしゃれなカルパッチョ風にアレンジすることも可能です。
安いだけじゃない!実はすごいカツオの栄養と健康効果
カツオは安くて美味しいだけでなく、私たちの体に嬉しい栄養素が豊富に含まれている優れた食材です。
特にたんぱく質や特定のビタミンの含有量は、魚の中でもトップクラスを誇ります。
カツオに含まれる主な栄養素とその働き一覧
カツオには、健康維持に役立つ様々な栄養素が含まれています。
栄養素 | 主な働き |
---|---|
たんぱく質 | 筋肉や臓器、皮膚など体を作る材料になる |
ナイアシン | 皮膚や粘膜の健康維持を助ける |
鉄分 | 赤血球を作るのに必要で、貧血予防に役立つ |
ビタミンB群 | エネルギー代謝を助け、疲労回復をサポートする |
ビタミンD | カルシウムの吸収を促進し、骨を丈夫にする |
EPA・DHA | 血液をサラサラにし、生活習慣病の予防に期待される |
特に、血合い(赤黒い部分)には鉄分やビタミン類が豊富に含まれているため、残さずに食べるのがおすすめです。
高たんぱく・低カロリーは本当?ダイエットや筋トレに最適な理由
カツオは、良質なたんぱく質が豊富でありながら、カロリーや脂質は控えめな食材です。
たんぱく質には、運動によって傷ついた筋肉を修復するアミノ酸が多く含まれているため、筋力を維持しながら健康的にダイエットしたい方や、トレーニングの効果を高めたい方に最適な食材と言えます。
貧血予防に効果あり?豊富な鉄分とビタミンB群の力
カツオに含まれる鉄分は、体への吸収率が高い「ヘム鉄」です。
さらに、赤血球の生成を助けるビタミンB12も同時に摂取できるため、貧血の予防や改善に非常に効果的です。
特に月経のある女性や、成長期の子供、妊婦の方などは意識して摂りたい栄養素です。
「カツオの安さ」に関するよくある質問

ここでは、カツオの価格や食べ方に関して、多くの人が抱く疑問についてお答えします。
カツオのたたきを食べると体に悪い影響がありますか?
カツオのたたきは栄養豊富な食品ですが、どんな食品でも食べ過ぎはよくありません。
特に、痛風の原因となるプリン体を比較的多く含むため、該当する方は摂取量に注意が必要です。
しかし、常識的な範囲で食べる分には、健康に悪い影響を与える心配はほとんどなく、むしろ多くの健康効果が期待できます。
スーパーで美味しいカツオを選ぶコツはありますか?
美味しいカツオを選ぶには、まず切り身の色に注目してください。
鮮やかな赤色で、血合いの部分が黒ずんでおらず、くっきりとした赤黒い色のものが新鮮です。
また、パックに水分(ドリップ)が出ておらず、切り身の表面が虹色に光っていないものを選ぶのがポイントです。
同じカツオでも値段が違うのはなぜですか?
カツオの価格は、いくつかの要因によって変動します。
一度も冷凍されていない「生」のカツオは、冷凍物に比べて高価になる傾向があります。
また、脂ののった「戻りガツオ」の時期や、一本釣りで漁獲されたものは価値が高くなることがあります。
産地や流通ルートによっても価格は変わってきます。
まとめ:カツオが安い理由と美味しく食べる秘訣
カツオがなぜ安いのか、その理由から美味しい食べ方、栄養価まで幅広く解説しました。
価格の手頃さは、豊富な漁獲量や加工技術の進歩など、様々な要因が重なった結果です。
この記事で紹介したポイントを押さえて、安くて栄養満点なカツオを日々の食卓でさらに楽しんでみてはいかがでしょうか。
- カツオが安い最大の理由はマグロより漁獲量が圧倒的に多いこと
- マグロに比べて漁獲規制が緩やかで安定供給が可能である
- 一般的な需要がマグロに集中しているため価格が上がりにくい
- たたき加工の自動化や日持ち向上もコストダウンの一因である
- たたきが多いのは生臭さを消し、寄生虫リスクを減らすためである
- カツオは鮮度が落ちやすく、生の刺身が流通しにくい魚である
- 独特の風味やクセが人の好みを分けることがある
- スーパーのたたきは「追い炙り」をすると香ばしさが格段に増す
- カツオは高たんぱく・低カロリーでダイエットや筋トレに適した食材である
- 鉄分やビタミンB群が豊富で貧血予防に効果的である